企業が計画的に採用活動を進めるには、応募者や全体のスケジュールの適切な管理が欠かせません。採用活動を管理する方法はさまざまですが、そのひとつがエクセルを利用した管理です。 すでにエクセルを採用管理に活用している方や、採用増に備えて導入しようと考えている方もいるのではないでしょうか。そこでこの記事では、エクセルを利用した採用管理のメリット・デメリットとより効率的な方法を紹介します。
採用管理をエクセルで行う2つの方法
採用活動の進捗をエクセルで管理する方法には、自社で独自の管理シートを作成する方法と無料で配布されているテンプレートを使用する方法の2つがあります。
運用の難易度やカスタマイズのしやすさが異なるため、それぞれの特徴を理解した上で使いやすいほうを選ぶとよいでしょう。ここでは、独自の管理シートを作成する方法と無料テンプレートを使用する方法の特徴を解説します。
採用管理表を作成して管理する
企業によって採用管理表に記載したい内容や管理する件数、採用までのプロセスが異なります。自社でオリジナルの採用管理表を作成する場合、記載する項目やシートの構成、使用する関数が自由なのが魅力です。
採用活動の進捗や応募者の情報、途中まで進んでいる選考の様子を見やすくまとめるとよいでしょう。詳細なシートや多過ぎる情報は見にくくなるため、どのような情報を優先して記載するか判断することも大切です。
無料テンプレートを利用して管理する
管理表はWeb上で無料配布されているテンプレートを使用する方法もあります。ある程度体裁が整っているため、最初から自社で作成するより手間を削減できるでしょう。
ただし、カスタマイズすると関数が崩れたりマクロが動かなくなったりすることがあるため、アレンジする際は注意が必要です。採用管理表を細かく作り込む必要がなく、スピーディーにシートを準備したい場合におすすめします。
エクセルの採用管理表を利用するメリット
採用管理をエクセルで行うことには、いくつかのメリットがあります。ここでは、主なメリットを4つピックアップして見ていきましょう。採用管理にエクセルを活用しようと考えている方は、下記のメリットが自社にとって魅力的なものかを吟味することをおすすめします。
コストを抑えながら管理できる
普段の業務でエクセルを使用している企業は多いため、採用管理に使用すれば新たなシステムを導入するコストがかかりません。
採用活動が大規模でなければエクセルでも十分に管理できるため、管理コストを削減できるのは大きなメリットといえるでしょう。台数制限があり、ライセンスを追加購入する場合でも、独自システムの導入に比べて低コストです。
応募者の情報を一覧で管理できる
応募者の情報をエクセル上に集約してリスト化すれば、1枚のシートで管理できます。関数を使用することで、特定の条件を満たす応募者の一括抽出も可能です。
これらの作業には関数やマクロのスキルが求められますが、普段からエクセルを使用していれば、それほど難しくはないでしょう。比較的簡単な操作で採用に必要な情報を一元管理でき、視認性を高められるのは大きなメリットです。
分析やグラフ作成ができる
エクセルにはデータをグラフ化する機能があるため、さまざまな情報を見やすくまとめられます。アドインの分析ツールを活用すれば、データを細かく分析して採用活動の改善や人事施策の立案に生かせます。
例えば、求人広告を出稿した媒体別の応募者数や採用率、かかったコストを分析して、どのように採用活動を進めれば効率的かを考えるとよいでしょう。応募者のスキルレベルをグラフ化して、採用可否を判断する材料として活用する方法も考えられます。
カスタマイズ性が高い
採用活動を進めていると、追加の情報が必要になったり採用予定数が増えたりすることがあります。エクセルの採用管理表であれば、状況が変化した際にカスタマイズできるのがメリットです。
セルの追加・削除だけでなく、配置の変更や関数の追加もできます。一度作成した採用管理表をカスタマイズしながら使えるため、採用活動のたびに作成する手間がかからないのもメリットといえるでしょう。
エクセルの採用管理表を利用するデメリット
エクセルは多くの企業で導入しやすい採用管理手法のひとつですが、デメリットも存在します。例えば、大規模な採用活動の場合、エクセルを使用すること自体向いていないでしょう。ここでは、エクセルで採用管理するときのデメリットを5つ紹介します。
複数人での同時編集は難しい
エクセルには同時編集しにくいというデメリットがあります。採用に携わる社員がそれぞれ自分のPCでファイルを管理していると、同時閲覧や同時編集が不可能です。ファイルをクラウドで共有すれば同時閲覧はできますが、それだけでは同時編集ができません。
複数の社員が同時に編集する必要がある場合、オンラインで同時編集できるMicrosoft 365 for the webの導入を検討しましょう。
PCの動作が重くなる
大規模な採用活動で管理するデータ量が増えたり、シート内に関数が大量に含まれていたりすると、PCの動作が重くなる恐れがあります。どの程度のデータ量で動作が重くなるかはPCのスペックに依存しますが、一般的にデータ分析に利用すると関数の量が増えて負荷がかかりやすいため、注意しましょう。
更新漏れのリスクがある
リアルタイムで同時編集が可能で、自動的にデータが保存されるMicrosoft 365 for the webを導入していれば問題ありませんが、同時編集が難しい環境下では更新漏れのリスクがあります。更新したファイルのアップロードや保存に失敗することもあり得るでしょう。担当者が更新を後回しにし、必要な情報を即時に得られないことも考えられます。
ヒューマンエラーが起こり得る
エクセルへの情報入力や更新、削除は手作業になるため、ヒューマンエラーのリスクは避けられません。セルや数値、数式の間違いの他にも、セルを追加したときに参照範囲がずれて正しい結果を反映できないことも考えられるでしょう。ヒューマンエラーが発生するとシートを修正しなければならず、ミスの抽出に多くの時間がかかります。
効率が高いとはいえない
エクセルを使用した採用管理は、データの入力やファイルの共有、データ分析で人間が作業する部分が多く効率的とはいえません。採用活動が大規模になれば、工程が増えて手間がかかる分、本来の採用業務に充てられる時間が減るでしょう。
手間が増えて同じ作業を繰り返すようになると、ミスの発生率が高まり、ヒューマンエラーによるトラブルリスクが増えるのも大きなデメリットです。
エクセルよりも便利な採用管理システムとは?
大規模な採用活動を展開する場合など、多くの社員が関わるときはエクセルによる採用管理は向いていません。エクセルのデメリットを解消して業務効率を高めるには、採用管理システムを導入するのがおすすめです。ここでは、採用管理システムの概要や主な機能について詳しく解説します。
採用管理システムのATSとは?
「採用管理システム(Applicant Tracking System)」とは、採用業務に携わる社員が情報をまとめて管理する目的で使用するシステムです。採用管理システムを導入すれば、エクセルで個別に管理表を用意する必要がなく、管理負担を大幅に削減できます。
採用管理の効率化を課題に感じている企業は、採用管理システムを導入することで、求人・選考・採用の全段階の業務効率を大幅に高められるでしょう。
クラウド型とオンプレミス型
採用管理システムは、「クラウド型」と「オンプレミス型」の2種類に分けられます。それぞれの特徴は以下の通りです。
・クラウド型:データを提供元のサーバー上で管理し、インターネット経由でアクセスして利用する
・オンプレミス型:自社に設置したサーバーでデータを管理する
クラウド型はサーバーの管理をサービス提供元に委託するため、低コストで運用できます。オンプレミス型はサーバーを設置・運用するコストがかかる反面、機密情報を守りやすいのがメリットです。どちらがよいかは状況によって異なりますが、利便性を求めるのであればクラウド型を選ぶとよいでしょう。
ATSの主な機能
採用管理システムは、求人情報や応募者の管理、選考状況の進捗管理など、採用活動を進める上で求められる機能を総合的に搭載しています。具体的な機能の例は以下の通りです。
・求人広告の作成
・求人サイトへの出稿
・応募者の情報管理
・選考状況の管理
・選考担当者からの情報伝達
人材募集や採用に関する全ての情報を集約するシステムといえるでしょう。十分な機能を実装した採用管理システムを導入すれば、目的別にエクセルのシートを作成して手動で管理する必要はありません。
エクセルにはない採用管理システムならではの魅力
採用管理システムは利便性が高く、さまざまな魅力があります。エクセルで管理する方法では実現できない機能もあるため、積極的に活用を検討してみてはいかがでしょうか。ここでは、エクセルにはない採用管理システムの魅力を6つ紹介します。エクセルに限界を感じている方や採用業務を効率化したい方はぜひチェックしてみてください。
情報更新や共有を手軽にできる
採用管理システムを導入すれば、採用活動に関する情報を集約できるため、ブラウザやアプリからシステムにアクセスすることで手軽に情報を取得できます。
必要な情報は各スタッフがシステムに直接登録でき、更新や共有がスムーズになるでしょう。エクセルを利用する際の「情報を共有しにくい」というデメリットを解消するのに有用です。
自動でデータ分析ができる
データ分析が自動でできるのも採用管理システムの魅力のひとつです。エクセルでデータ分析する場合、目的に合わせて関数を入力したり専用の分析ツールを活用したりする手間がかかります。
一方、採用管理システムは自動でデータを収集して分析するため、担当者の負荷を軽減できるのがメリットです。データ分析の環境構築ではなく、分析そのものに多くの時間を使えるでしょう。
手作業の負担を減らせる
ヒューマンエラーを減らすには、可能な限り手作業を減らすことが欠かせません。採用管理システムにはデータを自動で集約する機能があり、全てではありませんが、多くのデータを自動入力してくれます。
手動で入力するデータの数が減ることで、ヒューマンエラーを減らせるだけではなく、入力にかかる手間を削減できるのもメリットです。
スピーディーな選考ができる
優秀な人材をスピーディーに確保する上でも、選考スピードの向上は欠かせません。いままでエクセルや紙媒体で管理していた情報を採用管理システムに集約することで、工数を大幅に削減して選考スピードを高められます。
スケジュールを決める際も必要な情報や採用・不採用を判断するための情報はシステム上にあるため、スムーズな判断が可能です。応募者に連絡する機能を搭載しているシステムもあり、個別連絡にかかる時間も大きく減らせるでしょう。
採用のミスマッチを減らせる
システム上にデータを集約して分析することで、自社に必要な人材の情報と応募者の情報を可視化できます。データ分析によって自社と相性が良い応募者の特徴を明確にすれば、採用後のミスマッチを減らせるでしょう。
入社後に早期離職した人材と長期的に活躍している人材の情報もデータベース化すれば、自社で長く貢献してくれる人材を探しやすくなります。ミスマッチを減らすことは各チームの業務効率化にもつながる大きなメリットです。
応募者を手軽に管理できる
求人情報を掲載する媒体と連携できる採用管理システムを導入すれば、応募者に関する情報を自動で取得して一元管理できます。
求人サイトから応募があると、情報のチェックや選考のスケジューリングといった複数の業務が発生するため、連絡漏れやスケジュールの設定ミスのようなトラブルが発生しかねません。採用管理システムで自動的にデータを取得することで、応募者情報の管理や連絡の手間を削減して全体を効率化できます。
まとめ
エクセルを利用した採用管理は導入がスムーズでコスト負担が少ないものの、担当者に依存する部分が多く手間がかかります。さまざまな手間を削減して効率化を図るには、採用活動に特化した採用管理システムの導入がおすすめです。