リファラル採用は自社社員に人材を紹介してもらう採用手法で、日本ではあまり馴染みがありません。そのため、リファラル採用の話が持ち上がっても「管理が難しい」「スムーズにいきそうにない」などと感じている方もいるのではないでしょうか。 そこでこの記事では、リファラル採用が失敗する原因と成功させるコツを詳しく解説します。
リファラル採用とは何か
採用手法にはさまざまな種類があり、リファラル採用も数多くある手法のひとつです。優秀な人材を確保するには、それぞれの特徴やメリットを理解し、効果的に取り入れることが大切です。
ここでは、リファラル採用がどのような手法であるか解説するとともに、混同されがちな「縁故採用」との違いについても紹介します。
人脈を通じた採用手法
リファラル採用の「リファラル(referral)」とは、「紹介」「推薦」を意味する言葉です。その名のとおり自社の社員から友人や知人を紹介してもらいます。日本ではあまり馴染みがありませんが、欧米では広く取り入れられている手法です。
リファラル採用の大きなメリットは、採用コストを抑えられることです。社員の友人・知人に当たるため、求人サイト広告や転職エージェントを利用しなくても済みます。また、社員の推薦であることから、高いマッチング率や定着率を見込めます。
縁故採用との違い
縁故採用はいわゆる「コネ採用」とも呼ばれ、経営層や上層部の血縁関係にある人物を採用する手法です。
リファラル採用も縁故採用も「紹介による採用」という点は共通していますが、縁故採用は人材を確保するために人柄や人間性、あるいは紹介者との関係性を重視する傾向があります。
これに対し、リファラル採用は採用条件を満たした人物のみを採用します。紹介された候補者が期待する能力に達していない場合、採用は見送られるでしょう。
リファラル採用の失敗例
リファラル採用は採用コストを抑えられる上、自社とのマッチ度が高い人材を確保できる採用手法です。しかし、ポイントを押さえないと失敗してしまうことも少なくありません。ここでは、リファラル採用でよくある失敗例を5つ紹介します。
採用の目的が不透明である
リファラル採用に限った話ではありませんが、採用の目的が不透明なまま新しい採用手法を導入すれば失敗してしまう恐れがあります。リファラル採用を始めることをただ社員に伝えるだけでは、そもそも紹介すらしてもらえないかもしれません。「いつまでに」「どのような人材が」「何人必要なのか」など、細かく落とし込みましょう。
リファラル採用が社内に浸透していない
今のところ、リファラル採用は日本においてはマイナーな採用手法といえます。自社社員がリファラル制度の仕組みや目的、メリット・デメリットなどを理解していなければ、想定通りの協力は得られないでしょう。
加えて、「ただ人材を紹介してもらう」だけでは、自社にマッチした優秀な人材を確保できない可能性が高いです。そもそもリファラル採用とは何なのか、どのような人材が必要なのかを、自社社員に周知させる必要があります。
採用制度が整備されていない
リファラル採用は自社社員の協力なしでは成立しません。リファラル採用の制度設計が曖昧な場合、社員はどのようにして動けばよいのか分からなくなってしまいます。
社員に積極的に動いてもらうためにも、リファラル採用の仕組みや制度、ルールについてまとめた資料を用意しましょう。人材を紹介してくれた社員にはインセンティブを支給するなど、リファラル採用に協力的になれる環境作りも大切です。
公平な選考にならない可能性がある
社員からの紹介によるためか、リファラル採用は通常の選考と比べて採用基準が甘くなりがちです。リファラル採用とはいえ、公平な選考でなければ他の社員のモチベーションが低下する恐れがあります。労使間の信頼関係の減退につながるかもしれません。
せっかく紹介してくれた候補者を不採用するのは気まずいでしょうが、公平に選考を行うことのほうが大切です。リファラル採用であっても、選考に忖度が生じてはいけません。
不採用になると紹介者が減る
忖度なく選考すれば、紹介された候補者が不採用になるケースは当然出てくるでしょう。結果、紹介者と候補者が気まずい間柄になるかもしれません。そのような事例が生まれることで、リファラル採用に対して及び腰になる社員もいるでしょう。
しかし、採用活動は採用活動です。自社が求める基準と紹介者との差が生まれないよう、採用基準を設定した上で社員に周知することが大切です。
リファラル採用が失敗する原因
リファラル採用の失敗例を知った上で、なぜ失敗したのか原因を深く追求することが大切です。失敗の原因を知らないままでは対策も立てようがありません。ここでは、リファラル採用が失敗する原因を3つ紹介します。
リファラル採用が必要ない
そもそも自社にリファラル採用が合っていない可能性があります。リファラル採用は自社社員の協力ありきの採用手法です。自社とのマッチ度が高い人材を確保できますが、一度に多くの人材を確保するのには不向きな手法といえます。
例えば、新事業を始めるために多くの人材を確保したい場合、求人媒体や転職エージェントを利用したほうが効果的でしょう。企業の規模や必要な人材の数など、採用計画を立てる際は目的に応じて手法を選ぶことが大切です。
短期的な成果を求め過ぎている
短期間で多くの人材を集めたい場合、リファラル採用は不向きといえるでしょう。採用を急いでいるのであれば、求人広告系のサービスを利用したほうが結果を期待できます。大手のサービスや媒体を利用すれば、多くの転職希望者に一度にアプローチできるためです。
リファラル採用は、言い方を変えれば「自社社員任せ」の採用手法です。必ず成果が出るとは限りません。中長期的な目線で実施し、場合によっては他の採用手法と組み合わせることが大切です。
分析・データが不足している
新しい取り組みをするときはデータを取り、分析・改善することが大切です。応募してきた人材はどのような経歴を持った人が多いのか、面談回数や採用率はどのくらいかなど、次に生かすためにもデータを取りましょう。
社員の紹介に頼るリファラル採用とはいえ、成果を客観的に検証しなくては、採用効率を上げられません。他も採用手法と比べるとデータが取りにくい面はあるものの、社内全体や採用担当者間でデータを収集する文化を醸成しましょう。
リファラル採用のメリット
リファラル採用を成功させるのは簡単ではありませんが、確かなメリットがあるため、前向きに導入を検討してもよいでしょう。ここで紹介するのは、リファラル採用における2大メリットです。
採用のミスマッチを減らせる
世の中の退職理由で多く挙げられるのが「入社後のミスマッチ」ですが、ミスマッチが起こる原因は「入社前の企業理解が浅かったため」ともいえます。
その点、自社社員に紹介される候補者は、自社の企業理念や業務内容について深く理解しているケースが多いです。紹介者から直接あれこれを聞いているため、採用媒体の情報を通して応募してくる人よりも、より企業理解を深めた状態で選考に臨んでくるでしょう。入社後も、気心の知れた人物(紹介者)がいることで、早期に離職するリスクを下げられます。
採用コストを抑えられる
リファラル採用は求人広告費用や人材紹介サービスへの手数料などの費用がかからない点もメリットです。自社社員へのインセンティブ(紹介料)は発生しますが、求人広告や人材紹介サービスへの報酬に比べればかなりのコストダウンになります。
希望する能力や経験を携えた人物を採用することで、教育コストを抑えられるのも大きなメリットのひとつです。紹介者からの伝達で企業風土をよく理解している応募者であれば、今後の売上を伸ばす中心人物になってくれるかもしれません。
リファラル採用を成功させるコツ
リファラル採用は無計画で見切り発車しても失敗してしまう可能性が高いです。とはいえ、優秀な人材を確保するためのコツはあるのでしょうか。ここでは、リファラル採用を成功に導く4つのコツを紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
社内で協力体制を構築する
リファラル採用は自社社員の協力なしでは成立しません。社員に積極的に協力してもらうためにも、協力することで得られるメリットを用意することが大切です。
分かりやすいのはインセンティブ(紹介料)です。どのくらいの金額にするのか、どのタイミングで支給するのかなど、きちんと検討する必要があるでしょう。
ただし、「インセンティブのみでその気にさせる」のは、少々浅はかともいえます。社員が自ら人材を紹介したくなるような雰囲気を醸成することも大切です。
社員へ積極的に声掛けする
リファラル採用を導入する旨を社員に周知させても、社員が能動的に動いてくれるとは限りません。リファラル採用に力を入れていることを理解してもらうためにも、会社側から積極的に声掛けをしましょう。
例)
・同じ業種の知り合いを紹介してもらえますか?
・○○スキルの高い人は知り合いにいませんか?
・半年後に行う企業内イベントに参加してもらえる方はいますか?
選考前に親睦を深める
リファラル採用のデメリットとして、候補者が不採用になった際に紹介者と候補者との関係が気まずくなることが挙げられます。そのような事態を防ぐためにも、選考前に座談会やミートアップなどの交流の場を設け、相互理解を深めましょう。
候補者は納得した上で選考に進むかを判断できますし、仮に不採用になっても円満な関係を保ちやすくなります。
社員をフォローする仕組みを作る
「紹介した人物が採用されなかったらどうしよう」と感じ、リファラル採用に及び腰になる社員も多くいるでしょう。そのような懸念を払拭できるようなフォロー体制を作ることも大切です。
まずは前提として、不採用になる可能性は十分にあると説明しておくべきでしょう。実際に不採用になった際には、紹介者に対して「不採用になった理由」を丁寧に説明することが大切です。もちろん、紹介してくれたことに対しては感謝の気持ちを伝えてください。
まとめ
リファラル採用は自社の社員から人材を紹介してもらう採用方法です。リファラル採用を導入することで、自社とのマッチ度が高い人材を採用できる他、求人広告費用や人材紹介サービスにかかる採用コストを抑えられます。
導入するのはそれほど難しいわけではありませんが、採用目的が不明確だったり、短期的な成果を求めたりする場合だと、失敗してしまうでしょう。きちんと採用計画を立て、「社内全体でより良い人材を発掘する」という雰囲気を醸成することが大切です。