人材育成や人事評価などを目的として、定期的に人事面談を行っている方も多いのではないでしょうか。人事面談を効果的なものにするには、目的を明確にした上で適切に実施する必要があります。 そこでこの記事では、人事面談の目的や種類、効果の見込める面談のコツについて詳しく紹介します。
人事面談を実施する目的とは
人事面談には、「社員のモチベーションを高める」「人事評価を伝える」「離職を予防する」といった目的があります。人事面談を実施する際は、どのような目的で行い、どういった成果を目指すのかを明確にすることが大切です。
ここでは、人事面談の主な目的を3つ紹介します。目的に応じて社員へ伝えるべきことは異なるので、事前に押さえておくとよいでしょう。
社員のモチベーションを高めて成長を促す
人事面談を実施する目的の一つが、社員のモチベーションを高めることです。モチベーションを高めることを主目的とする場合は、以下の内容を社員へ伝えるとよいでしょう。
・企業・チーム全体の目標
・面談対象の社員の成果目標
・伸ばしてほしい長所
・改善してほしいポイント
社員の良かった点を適切に褒めつつ、次に達成してほしい目標を伝えることでやる気を引き出します。さらに改善点や企業の発展に貢献できる人材になってほしいという思いを伝えることで、社員のモチベーションを高められるでしょう。
評価を伝えて納得してもらう
人事評価の結果のみを対象者に伝えると、時には不満を抱かせてしまう恐れがあります。評価内容への不平は組織全体への不満につながる可能性があるため、評価を伝える人事面談では評価基準や理由、結果をセットで伝えることを意識しましょう。社員も、評価結果と理由を併せて知ることで納得しやすくなるでしょう。
継続して努力すべき点と改善したほうがよいポイントも伝えると、社員のさらなる成長を促せます。
心理的安定性を高めて離職を予防する
社員の心理的安定性も、面談において意識しなければならないポイントです。Googleの調査によると、心理的安定性が高い社員は離職率が低く、効果的に働けるという結果が出ています。
人事面談を通じて社員一人ひとりの考えや所属しているチームの状況を知り、仕事内容やチームのメンバーなどに不満を抱いていないかどうかを探りましょう。問題があるときは、解決策を立案するなどして優秀な人材の離職を防ぐことが大切です。
人事面談の種類は主に3つ
人事面談の種類は、主に「目標設定面談」「フィードバック面談」「1on1ミーティング」の3つに分けられます。人事面談を行う目的を達成するためにも、事前にそれぞれの面談において軸となるポイントを明確にしましょう。ここでは、面談の種類別に押さえておきたいポイントについて解説します。
目標設定面談:個人の目標を設定する
一人ひとりの目標設定を目的として実施する面談を「目標設定面談」と呼びます。この段階では、達成しなければならないメインとなる目標と、その過程で達成度合いを測定するのに役立つ指標の二つを設定する形が基本です。
ただし個人目標とはいっても、具体的な内容は企業・チーム全体の目標を達成するのに役立つものでなければなりません。個人目標を達成できたとしても、全体の目標との間にずれが生じていると高い成果は上げられません。
フィードバック面談:定期的に評価する
1か月に1回など、比較的短い間隔かつ定期的に行う評価目的の面談が「フィードバック面談」です。フィードバック面談では、目標設定面談で掲げた目標を現状でどの程度達成しているのかを確認するとともに、続けて取り組んだほうがよい点、改善すべき点を伝えるとよいでしょう。
一人ひとりを適切に評価するためにも、KPI(重要業績評価指標)と呼ばれる中間目標を明確に定めて事前に共有しておくことをおすすめします。
1on1ミーティング:被評価者のモチベーションを高める
上司と部下が1対1で実施するミーティングを「1on1ミーティング」と呼びます。目標設定面談やフィードバック面談とは異なり、部下から話を聞き出す点が特徴です。ミーティングで話す内容も、仕事内容へのフィードバックや雑談など多岐にわたります。
1on1ミーティングを通じて部下との間に信頼関係を構築できれば、優秀な人材の流出を防げるのみならず、部下の成長やモチベーション向上効果が期待できるでしょう。
【目標設定面談編】成果が期待できる人事面談のコツ
ここからは、「目標設定面談」では何を話せばよいのか、どのような流れで進めればよいのかについて解説します。基本的な目標管理フレームワークについても併せてチェックしておきましょう。自社の人事評価制度や経営方針とマッチした運用が大切です。
目標と指標を事前に定める
目標設定面談は一人ひとりの個人目標を定める場です。人事面談をスムーズに行うためにも、事前に個人目標をある程度考えておくよう伝えておきましょう。目標管理フレームワークとしては「OKR」というものが広く用いられており、以下の二つを定めて運用します。
・目標(Objectives): 目標として掲げる定性的かつ具体的な内容(70%程度の達成度合いが見込めるもの)
・指標(Key Results): 目標の達成度合いを測定するために使用する定量的な指標
目標として掲げるのは、「自社製品の市場シェアを高める」のように定性的なものです。一方、指標としては「前期比+10%の新規契約を獲得する」のように具体的な数値を盛り込んだものを定めましょう。目標と指標は全社的なもの、チーム全体のもの、個人のものの順で定めます。さらに、定めた目標は全社的に共有することが基本です。
面談を通じて共有する
あらかじめ目標と指標を定めたら、目標設定面談の機会を通じて共有します。企業・チーム・個人の目標と指標を共有することで、目標達成へ向けて一致団結して業務に取り組めるようになるでしょう。さらなる業績の伸長という効果も期待できます。
目標・指標をアップデートしたときは、その都度共有して常に最新の目標を追い掛けられるようにしましょう。
【フィードバック面談編】成果が期待できる人事面談のコツ
フィードバック面談は主に人事評価と密接に関連しているため、評価制度と一体化した運用が大切です。毎週、毎月など頻繁に実施することでさらなる効果が期待できるため、業務負担を考えた上で適切な頻度で実施できるよう運用体制を整えましょう。
ここでは、フィードバック面談をより効率的に運用するコツを紹介します。
事前に評価シートを作成する
フィードバック面談を実施することを決めたら、事前に評価シートを作成しましょう。評価シートには、事前に定めた目標と指標を記入します。
続いて、それぞれの成果指標をどの程度達成したのかを振り返ってシートに盛り込みましょう。達成状況が事前に定めた指標の70%程度に達していたら、「達成した」と判断します。70%を大きく上回っていれば、特筆すべき成果が出たと判断できるでしょう。
フィードバック面談は評価シートに基づいて進行すると効果的なため、きちんと制作しておくことが大切です。
人事評価の結果とその理由を明確に伝える
面談を実施するときは、評価の結果と理由をセットで伝えることが基本です。併せて基準についても伝えれば、評価に納得してもらいやすくなるでしょう。
結果・理由・基準の三つを伝えれば、社員は何が評価につながったのか、どのような取り組みを続ければよいのか、どこを改善したほうがよいのかを明確にできます。
なお、OKRは報酬制度と結び付けずに運用することを想定した目標管理フレームワークです。社員には報酬に反映されないことを伝えることで、より高い目標を掲げてもらえて成長を促せるでしょう。
次のシーズンの目標や指標を定める
面談の最後には、今後の目標と達成度合いを測定する指標を定めます。次にどのようなことに取り組まなければならないかを明確にすることで、今後も主体的に行動してもらえるようになるでしょう。
社員も自分が何に注力すればよいのかが分かり、モチベーションを高められます。次回の面談ではここで定めた目標の達成状況を振り返るため、一人ひとりの目標をきちんと記録しておくことも大切です。
【1on1ミーティング編】成果が期待できる人事面談のコツ
社員一人ひとりのモチベーションを高めるには1on1ミーティングが高い効果を発揮します。効果的な1on1ミーティングを実施するためにも、基本的な運用方法や面談で聞くべきポイントを正しく把握しておきましょう。
ここでは、1on1ミーティングの流れと意識しておきたいポイントを紹介します。
テーマを決める
1on1ミーティングの実施を決定したら、最初にテーマと目的を定めましょう。テーマを決めるときは、面談担当者の都合ではなく、部下の課題や悩みを考慮します。本人にヒアリングするなどして決定するとよいでしょう。
事前にテーマを明確化することで、話す内容が決まってミーティング中に方向性がずれることを防げます。内容を詰め込み過ぎると要点を見失うため、適切に取捨選択することが大切です。それほど重要ではないポイントは、次回以降に回すなどして適切に運用しましょう。
事業方針を共有する
ミーティングの機会を活用して、経営方針や将来のビジョン、チームの目標などを共有するのも効果的です。これらの情報を伝えることで、組織の一員として自分がどのように貢献できるのかを考え、目標に反映するように促せます。その上で、上司と部下が一緒に具体的な目標を考えると効果的なものになるでしょう。
事業方針の共有は、個人の目標を全体の目標にマッチさせたり、社員一人ひとりのモチベーションを高めたりする効果に期待できます。
対象期間の取り組みを自己評価してもらう
1on1ミーティングは定期的に実施するため、前回から今回の面談までの取り組みを自己評価してもらうことも大切です。特に人事評価について取り扱うときは、事前に自己評価してもらうことで人事評価とのずれを可視化できます。
場合によっては、評価担当者のミスを発見することもあるでしょう。自己評価と人事評価を照合してなぜそのような結果になったのかを共有し、納得してもらうことは今後の成長を促す上でも欠かせません。評価に間違いが見つかったときは修正が必要です。
これからやりたいことやキャリアを尋ねる
部下が今後挑戦したいと思っている仕事内容や、思い描いているキャリアプランに関して質問するのもおすすめです。1on1ミーティングはその名の通り1対1で行うため、本心を聞き出しやすい環境といえるでしょう。
挑戦したいと思っている仕事を依頼したり、キャリアプランを実現するための環境を準備したりすることで、モチベーションアップ効果に期待できます。部下にとっては意欲的に働ける環境の創出につながり、高い成果につなげやすくなるでしょう。
人事面談の効果をさらに高めるためにできること
目的に応じた人事面談を開催することは大切ですが、より効果的なものにするにはどのように運営するか考えることも欠かせません。ここでは、限られた面談時間で可能な限り高い効果を出すためのポイントを4つ紹介します。
人事面談を通じて社員のやる気を引き出し、さらに高い成果を生み出すためにも事前にチェックしておきましょう。
効果的な質問を用いる
面談で相手と意思疎通を図るには、効果的な質問を用いることが欠かせません。具体的には、以下のような質問を盛り込むとよいでしょう。
・全社的な目標に対して、どのような個人目標を設定しますか
・現状の業務で課題に感じていることはありますか
・前回の面談から今回までに何に注力しましたか、またどのような成果を残せましたか
・今後チャレンジしたいと思っている仕事はありますか
・将来のキャリアについて考えていることはありますか
面談の目的を達成するために何ができるかを考え、どのような質問を用いればよいか考えることをおすすめします。目的外の質問をすると論点がずれるため、注意が必要です。
評価基準を明確にする
人事評価を伝える面談では、結果と理由だけではなく評価基準について伝えることも忘れないようにしましょう。評価基準が明確化されていないと、社員側は「なぜこの評価になったのか理解できない」と不満を抱きがちです。
基準を明確に伝えれば、基準に対する達成度合いがどの程度なのか、不足している点が何かが可視化されるのでより納得してもらいやすくなります。社員も基準を正しく理解できるため、自分がどの点を努力すればよいのかを理解できるようになるでしょう。
評価と報酬体系を結び付ける
人事評価制度と報酬体系を正しく結び付けることも大切です。評価が報酬に結び付いていないと、「高い評価を得られたのに報酬に反映されない」と感じて社員がやる気を失う結果になるでしょう。そのため、高い成果を出した社員に適切な報酬を支払う仕組みを作り、運用することが求められます。
運用するときには、人事評価制度と報酬体系がどのように関連しているのかを明示し、社員がその仕組みを理解できるようにすることも大切です。人事評価がどのように報酬に反映されるのかが不透明な場合は、明確にする意識が欠かせません。
面談シートを活用する
面談を効果的に進めたいのであれば、事前に面談シートを用意しておくのがおすすめです。面談シートは事前に作成し、面談で知ったことを理解するために用います。具体的には、以下のことを記入するとよいでしょう。
・質問内容と回答
・人事評価と理由
・社員の自己評価内容
・目標
・課題
・今後取り組みたいこと
・フィードバック内容
質問内容や人事評価に関する内容は事前にシートに記載し、面談で知った相手の回答を追加で記入します。自己評価や目標をはじめとした面談で知った情報は面談中や面談後に記入し、後でチェックできるようにしておきましょう。
上記の情報を過不足なく盛り込むことで、人事面談を効果的かつスムーズに実施できるだけでなく、面談後に分析しやすくなるのがメリットです。場合によっては、部下の心情や考えの変化にも気付きやすくなるでしょう。
まとめ
人事面談を実施する目的は、人事評価の伝達や社員のモチベーションアップ、教育などさまざまです。限られた時間で効果的な面談を行うためにも、事前に目的を定めて途中で軸がぶれないように運用しましょう。
1on1ミーティングなど、部下のやる気を引き出すための面談を実施するのも効果的です。どのような種類の面談を実施するとしても、社員の成長を促すことが大切といえます。適切な人事面談を実施することで、一人ひとりが自分のスキルを十分に発揮し、目標を達成して全体の売り上げに貢献できる環境を作れるようになるでしょう。